【番外編】刑法に組み込まれた「戦争」
戦前の刑法は、外患罪における防諜行為(対スパイ行為)や敵国援助行為の禁圧、皇室に対する不敬の摘発(不敬罪)などを媒介として、戦争遂行のための国家意思の統一と、物資・情報の保護のための土台として機能した。さらに、戦時刑事特別法などの戦時治安立法が加わることで、刑事司法は完全に戦争遂行のための道具(治安国家の強力な武器)と化したのであった。
園田寿
2026.09.13
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いらすとやさんのイラストを使わせていただきました。
1.序―国家的法益の優先序列と治安刑法への傾斜
近代の市民刑法は、個人の生命、身体、自由、および財産といった個人的法益の保護をその第一義的な任務としてきた。しかし、大日本帝国憲法下における戦前の日本刑法典(明治40年法律第45号)においては、国家が個人を超えた自己目的的存在であり、国家は個人より上位の価値を持つものとして位置づけられていた。この国家優位の考え方は、刑法典各則の配列において、国家的法益に対する罪(内乱、外患、公務執行妨害など)が、個人的法益に対する罪よりも先に置かれていたことに象徴的に表れている。