麻薬単一条約の過去・現在・未来について
日本も加盟している麻薬単一条約(1961年)は、20世紀半ばの地政学的な力学と絶対的禁止主義のイデオロギーの下で構築された歴史的産物である。その強固な禁止主義は、合法的な医療用薬物の流通を管理するという点においては一定の役割を果たしてきた。しかし、その硬直した教条主義は、現代における人権保護、ハームリダクション、そして科学的根拠に基づく市場規制の波に完全に逆行している。
園田寿
2026.05.30
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麻薬単一条約に関する資料の一部(国立公文書館より)
はじめに
日本も加盟している「1961年麻薬に関する単一条約(Single Convention on Narcotic Drugs, 1961)」は、現代のグローバルな薬物統制レジーム(Global Drug Control Regime)の法的・制度的基盤を形成した最も重要な多国間条約である。本条約は、20世紀初頭より形成されてきた複数の国際協定を統合・簡素化し、薬物の生産、製造、貿易、流通、使用、および所持を「医療および科学的目的」に限定するという、強固な絶対的禁止主義を国際法において確立したのであった。しかし、制定から半世紀以上が経過した現在、同条約が掲げた「薬物なき世界」という教条的なイデオロギーは、各国の公衆衛生政策、先住民の人権保護、および合法的な法規制市場を模索する現代の動向と深刻な軋轢を引き起こしている。