黒人労働者の食事にはコカインが入れられていた

アメリカにおける薬物規制を動かしてきたものは、医学的・法的根拠よりもむしろ特定集団への恐怖や排外主義といった政治力学であった。その典型例がコカインに対する規制強化の過程である。
園田寿 2026.09.09
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1.はじめに

コカ葉からコカインが初めて純化されたのは1860年、ドイツでのことだった。その後、この物質がアメリカ国内で安価に大量流通し始めるのは1880年代半ば以降である。アメリカの黒人奴隷制は、南北戦争終結後の1865年に憲法修正第13条の批准によって完全廃止されたが、その後のジム・クロウ期(1880年代末〜20世紀初頭)の南部において、自由の身となった黒人労働者の食事やスープに、雇用主が生産性を向上させる目的で意図的にコカインを混入、あるいは配給していた(Courtwright, 2001, 94-95 ; Kamienski, 2017, 61-62)。

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