【番外編】強盗殺人を犯した16歳の少年と少年法

はじめに
16歳の少年が強盗殺人罪で逮捕されるという衝撃的な報道があった。背後にはトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の存在が言われている。まだ事件の詳細は分からないが、16歳の少年が強盗殺人罪を犯した場合の法的な問題について簡単に整理しておきたい。
少年法上の特則
16歳の少年が強盗殺人罪(刑法240条後段)という、法定刑が「死刑又は無期懲役(拘禁刑)」に限られる重大な凶悪犯罪を行った場合、成人の刑事手続きとは異なる少年法上の特則が適用される。
手続的面における最大の特色は、少年法が採用する「全件送致主義」とは別に「原則逆送(検察官送致)制度」という制度である。16歳の少年の場合、刑事責任能力(14歳以上)を有する「犯罪少年」に該当するため、事件は捜査機関からまずは家庭裁判所(家裁)へ送致される(少年法41条、42条)。
家裁は少年鑑別所送致などの観観護措置を講じ、少年の資質や環境の調査、および少年審判を行う機関である。しかし、少年法20条2項は「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」の事件であって、犯行時16歳以上の少年に係るものについて、原則として検察官に逆送しなければならないと規定している。強盗殺人罪はこの「原則逆送対象事件」に直ちに該当するため、家裁が調査の結果として「刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」という例外的な事情を見出さない限り、事件は検察官へと逆送される。逆送を受けた検察官は原則として公判請求(起訴)を行う義務を負い(少年法45条5号)、起訴後は成人と同様に地方裁判所の裁判員裁判によって審理されることとなる。
刑事裁判
刑事裁判では、少年法51条による処断刑の緩和規定が重要な意味を持つ。まず、少年法51条1項により、行為時18歳未満の者に対しては死刑をもって処断すべきときであっても無期刑(無期拘禁刑)を言い渡さなければならないとされているため、16歳の少年に死刑が科されることは法律上あり得ない。
さらに、同条2項は、無期刑をもって処断すべきときであっても、裁判所が相当と認めるときは、10年以上20年以下の有期拘禁刑(旧・有期懲役)を言い渡すことができると規定している。
なお、少年法52条1項は少年に対する有期刑の言渡しにおいて長期と短期を定める不定期刑を規定しているが、これは「有期刑をもって処断すべきとき」に限定される。強盗殺人罪の法定刑にはもともと有期刑が含まれておらず、「死刑又は無期刑をもって処断すべきとき」に該当するため、51条2項による緩和措置が選択された場合であっても、言い渡されるのは不定期刑ではなく「確定刑(定期刑)」となる(判例)。
近年の刑事司法実務における量刑傾向から判断すると、16歳であっても強盗殺人という重大犯罪の場合においては、犯行の態様、計画性、残虐性、結果の重大性といった「犯情」が著しく重いと判断されれば、51条2項の緩和は適用されず、無期拘禁刑が選択される可能性が高い。
しかし、匿名・流動型犯罪グループ(いわゆる闇バイト等)に強迫的に加担させられたような従属的な関与、資質上の問題、環境的要因、あるいは深い反省の情が認められ、家裁段階で「保護処分が相当」と判断される例外的な余地も理論上は残されているが、実際は極めて難しいと思われる。
むすび
最後に、刑の執行段階においては、刑は成人向けの刑務所ではなく、少年刑務所(または成人の刑務所内での特別区画)において執行される(26歳になると一般の刑務所に移送)。
また、少年法58条は仮釈放の要件を緩和しており、無期刑の場合は「7年」、51条2項による20年の有期刑の場合は「3年超」の経過によって仮釈放の許可を認めることができると規定しているが、実際の運用においては、成人の無期刑と同様に極めて慎重な判断がなされている。(了)
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