日本の薬物政策の現状と課題
厳罰と排除を軸とする日本の薬物政策は、科学的根拠よりも歴史的経緯と道徳規範によって支えられてきた。世界が「処罰から支援へ」という価値転換を遂げるなか、日本もまた薬物問題を犯罪問題や個人の道徳的失墜としてではなく、社会構造が生み出す公衆衛生上の課題として捉え直すべきである。
園田寿
2026.04.09
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1 日本における薬物政策の特異性と国際的な乖離
日本の薬物政策は、現在重大な岐路に立たされている。国際社会においては、半世紀以上にわたって推し進められてきた「薬物戦争(War on Drugs)」の失敗がはっきりと宣言され、薬物問題を刑事司法の問題としてではなく、公衆衛生と人権の観点から捉え直す視座の大きな変化が急速に進行している。国連機関や欧米諸国を中心に、薬物使用者に対する過度な刑罰の適用を廃し、治療や社会復帰を優先する「ハーム・リダクション(Harm Reduction=被害低減)」の理念が広がり、定着しつつある。