極右の台頭と薬物政策への影響―欧州の経験―

国際的な薬物政策は、厳格な禁止主義(懲罰的アプローチ)から、公衆衛生を重視するハームリダクション、さらには合法化や非犯罪化、あるいは刑罰以外の前科のつかない行政罰で対処する非刑罰化といった多様なアプローチを経験してきている。このような流れが、極右が強調する「法と秩序」や「国家の純粋性」、「排外主義」、「自国第一主義」といった概念によって、どのような影響を受けるのかを欧州の経験から考えてみたい。
園田寿 2025.08.12
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ネオナチのデモの様子 ドイツ、ライプツィヒ、2009年10月(by Wikipedia)

ネオナチのデモの様子 ドイツ、ライプツィヒ、2009年10月(by Wikipedia)

1.はじめに

極右とは、きわめて大雑把な括りでいえば、強いリーダーによる統治や権威主義的な中央集権を志向し、反対意見に抑圧的であり、民主主義国家の根幹である人権や法治主義に否定的な態度をとり、人種的属性に大きな価値を見出すイデオロギーだといえるであろう。その最大の特徴は、外国人や社会的マイノリティーに対する敵視である。

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