薬物の押収と市場の逆説
違法薬物についてこれだけの押収量があったからといって、その薬物に関する国内流通量がそれだけ減少するわけではない。むしろ、取締りを強化すればするほど、違法薬物の潜在的利益率が高まり、犯罪組織に多額の経済的利益が流れ込む。押収量の増加は、市場の逆説を刺激するのである。
園田寿
2025.08.15
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ヒュドラー(ヒドラ)を退治するヘラクレス
2025年8月、関東信越厚生局麻薬取締部は、海上コンテナに隠され密輸された乾燥大麻1.046トン(末端価格約52億円相当)を押収したと発表した。これは統計が残る1954年以降、年間押収量としても初めて1トンを超え、過去最大規模だという。押収は摘発の成果として報じられたが、こうした大量押収が必ずしも国内流通量や薬物使用の減少につながるものではない。むしろ、違法薬物市場に逆説的な効果をもたらす危険性がある。
大麻1トン52億円相当を押収、過去最大量 麻薬取締部
関東信越厚生局麻薬取締部は13日、海上コンテナに隠して密輸された乾燥大麻1.046トン(末端価格52億円相当)を押収したと発表した。同部によると、違法薬物の1度の押収量として過去最大。乾燥大麻は統計が残る1954年以降、年間押収量としても1トンを超えたことはなかった。