化学、戦争、注射器―19世紀末のアメリカでなぜ薬物がまん延したのか―

有機化学の進化と皮下注射器の発明は、医療と医療技術に革新をもたらしたが、薬物依存まん延の引き金ともなり、人種的偏見を伴う薬物規制の強化、そして個人の悲劇をもたらした。しかし、いかなる薬物規制も、このような悪しき性質を排除することはできなかった。
園田寿 2025.09.29
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パーク・デイビス社製「皮下注射キット」(Parke Davis No. 2 Hypodermatic Case with Syringe)

パーク・デイビス社製「皮下注射キット」(Parke Davis No. 2 Hypodermatic Case with Syringe)

1. はじめに

世界の薬物規制体制を牽引してきたのは、アメリカである。そのエネルギーの源は、19世紀末にアメリカ社会が深刻な薬物問題を抱えてきたことに遡る。

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