おとり捜査―薬物厳罰主義の申し子―

厳罰主義的な薬物政策の根底には、個別の処罰を通じて全体への抑止効果を狙った一罰百戒の予防的な思想がある。そこでは検挙数を上げることが重要となるが、おとり捜査は密航性や組織性を特徴とする薬物事犯の摘発を容易にする。しかし他方でおとり捜査は、脆弱な個人を策略に陥れ人の尊厳を奪うリスクを伴っている。
園田寿 2025.11.09
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1.はじめに

わが国の薬物政策は、長年にわたって厳罰主義(懲罰的パラダイム)によって支配されてきた。これは、刑事司法の介入を医療的介入よりも優先的に重視し、個別の薬物使用者や売人を厳罰に処することで薬物のまん延を抑制しようとする一罰百戒的なアプローチである。しかし、多くの専門家が指摘するように、この政策は今では失敗に終わっており、むしろ社会に深刻な不正義をもたらしている。

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